作家で、ミュージシャンで、一人の父、辻仁成さん。

 パリでの生活や息子さんとの日々、多様な活動を前に生じた想いを、約20万人のフォロワーを持つツイッターや自らが主宰するWEBサイト"Design Stories"などを通じて発信しています。

 その辻さんがツイッターで配信しているものの中でも反響を呼んでいる「十か条」を書籍化いたしました。そこで、本書より「はじめに」を特別にご紹介。

 悩んだときや壁にぶつかったとき、あなたはどう考え、そしてどう行動するべきでしょうか?

 不運、トラブル、人間関係――。どんなに辛いときも、この「十か条」があれば乗り越えられる!

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はじめに

 この世は常に生きにくい。でも、人間は生き切らないとなりません。心が折れそうになる毎日、陰口悪口が聞こえてきます。

 ままならないこの世界ですが、少しでもままなるよう人生を全うしたいと人は願うわけです。ネガティブになりがちな日々ですが、どんな時も張り合いのある前向きな人生を歩んでいたいと思うわけです。

 ソリューションはいくつもあります。目的地にたどり着くための道は一つじゃなく無限なのです。あの手この手の解決策を私は自分のために用意してきました。その数多の道こそが可能性と言えるかもしれません。

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 文明社会では十進法が採用されています。それは人間が指折り数えたことを起源にします。

「十人十色」「一から十まで」など十という数字は全部を表す比喩として多用され、十界、十方、十干、十徳、十哲など、十をひとまとめにして数える言葉は少なくありません。西洋にもモーセの十戒など、十が重用されてきた歴史があります。

 一つの難問を解決するのに一つの解決策では足りません。けれどもこれらが十の束になる時、それは十徳となり難題を蹴散らします。

 それほど人間には可能性があるという証でしょう。それくらいたくさん私たちには解決策があるということのたとえかもしれません。

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 私が難問にぶつかるたびに考えだしたこれら「人生の十か条」を一冊にまとめることにしました。一つの問題に対する十の心構えをまず提示し、その後、じっくりとそれらを説明していく。

 同じように苦難と向き合う読者の皆さんが少しでも心を楽にして生き進んでほしいという願いが本書には込められています。十全を期して、この苦しい時代を乗り越えていきましょう。

 つまり「人生の十か条」とは私たちに与えられた無限の可能性の筋道なのです。

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『人生の十か条』より

辻仁成:1959年、東京都生まれ。作家、ミュージシャン、映画監督、演出家。福岡・帯広・函館などさまざまな街で育つ。81年、ロックバンド「エコーズ」を結成。89年、処女小説『ピアニシモ』(集英社)ですばる文学賞、97年『海峡の光』(新潮社)で芥川賞、99年『白仏』フランス語版で同国のフェミナ賞を受賞。『立ち直る力』(光文社)、『真夜中の子供』(河出書房新社)ほか著書多数。