ショートケーキ、シュークリーム、あんみつにお団子......。
考えるだけで頬が緩んでしまう甘党の方も多いのでは。
今回刊行となった『スイーツ放浪記』の著者・今柊二氏も大の甘党だ。
食評論家として定食や洋食を食べ歩くうちにスイーツの魅力にも気付き、最近ではスイーツ研究にも力を入れている。
本書でもとにかくスイーツを巡り、食べ歩いた店の数、なんと86店!
独自のセレクトにより、老舗甘味処、定番洋菓子店、王道パーラー、街の喫茶店、ファミリーレストラン、ファストフードまで、非常に幅広い充実のラインナップとなっている。
また、各地食べ歩くことで見えてくる日本の甘味のルーツも必読。
どうやって日本に甘味の文化が根付いたのか、日本人にとって甘味とはどんな存在だったのか――。
いままで知ることのなかったスイーツの奥深い世界にも、触れることができる。
心もおなかもたっぷり満たされること必至の同書より、「はじめに」をご紹介。
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私は酒があまり飲めない。全く飲めないわけではないし、ビールだって、ウイスキーだって、少しならとてもおいしくいただける。ビールなら中瓶1本くらい、ウイスキーの水割りなら2杯くらいか。最近は、「もっと飲め」と無理強いされることはほとんどなくなったが、若いときは、人生の諸先輩たちに「男なら酒をたくさん飲め」と自分の限界を超えて飲まされ、何度かつぶされたことがある。
そんなとき頭をよぎるのは、「酒はもういいから、甘いものが食べたいなあ」という考えであった。それゆえ、飲み会から解放された後はなんとか自宅そばまで帰ってきて、ふらふらとコンビニにたどりつき、アイスケースから「グリコ・ジャイアントコーン」を取り出して購入。そして紙を剥いでチョコとナッツの部分をかじりつつ、バニラをなめて、正気に戻るというのがパターン化した。バニラアイスのおかげでどんどん酔いから醒め正気に戻っていくその途中、つくづく思ったのは「私は甘いもの好きなのだ」ということだった。
現在、定食評論家とも名乗る私だが、定食と同じくらい甘味も好きだ。ゆえに、おいしい定食や洋食を食べた後にデザートを食べるときなどは、もうシアワセの極致ですね。これは一生続くでしょう。
ということで、今回は甘いもの、つまりスイーツに焦点を絞った一冊です。実は酒よりも甘いものが食べたい、もしくは酒も好きだがスイーツだって好きだという、私と同様に甘いものを食べたいおっさんのための救済の一冊になれば成功だと思う次第です。
今 柊二:1967年愛媛県生まれ。食評論家、定食評論家。横浜国立大学卒業。大学卒業後の93年に畸人研究学会を立ち上げ、主幹として95年より機関誌『畸人研究』を発行。96年より漫画雑誌『ガロ』で畸人に関する連載を開始。2002年、『東京定食屋ブック』(共著)より定食評論家に。主著に『定食バンザイ!』(ちくま文庫)、『ニッポン定食散歩』(竹書房)、『とことん! とんかつ道』『洋食ウキウキ』(中公新書ラクレ)など。最近では、甘党な性分からスイーツ研究・調査にも力を入れる。