森友学園文書改ざん問題、財務次官のセクハラ問題、文科省汚職事件、厚労省によるデータ捏造――。「官」の組織自体が劣化しているのではないか、と思わせる事態が次々と発生してきており、それに対する批判が強まっています。今年世間を賑わしてきた役人に関する事件は、何が共通の病根なのでしょうか。

 本書は、「官僚組織のリーダーが判断を誤ればその影響は広く国民に及ぶ」「役人に必要とされる広い意味での心構え、技術についての本がない」という著者の危機意識のもと、役所に職を奉ずる者、また組織に携わる者の知恵と技法について書かれた渾身の書です。

 単行本の発行から16年が経ちますが、長らく名著として読み継がれてきた本書を、このたび新装版として緊急復刊いたしました。「官」に対する国民の信用が失墜している中、本書が提示する普遍的なテーマは現代においてきわめて有効です。一人でも多くの公務員、社会人の方々に読んでいただきたいと願っております。

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<目次>

【文章】
⋄ 役人の基本は文書
⋄ 良い文書の要領
⋄ 役人は文書が下手だ
⋄ 速く書くには足で考え、頭で書く
【交渉】
⋄ 役人の真髄は交渉力
⋄ 相手と自陣の実力者を把握する
⋄ 首をタテに振らずナナメに下ろす
【組織】
⋄ 役人は組織で仕事をする
⋄ 部下は実力相応の踊りを振りつける
⋄ 知性をもったガキ大将
【人事】
⋄ 人事への高い関心
⋄ 成果の背景に膨大な蓄積
⋄ 人事4つの心得
【健康】
⋄ 健全な判断は健全な心身から
⋄ ミジメを絵に描いたような生活
⋄ 心の病気にかからないために

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<新装版刊行にあたって> 久保田勇夫                  

 今回、私が20年近く前に著した『役人道入門』が、中公新書ラクレとして出版されることになった。旧著に対する需要が高まったことによるようである。有り難いことである。

 これまで深く議論されることが少なかった「公務員」や「公務員制度」あるいはいわゆる「政」と「官」との関係に世間の注目が高まりつつあることの反映でもあり、これらがより多く議論されるようになったことは好ましいことだと考えている。
他方、その背景を考えると、喜んでばかりはいられない。なぜならこのような注目の高まりは、何よりも「官」の組織自体がかなり劣化しているのではないか、と思わせる事態が最近次々と発生してきており、それに対する世間の批判が強まっていることによるものだからである。

 事案の内容を正確に知る立場にはないが、セクハラで辞任に追い込まれる可能性のある人物をそのトップとして「政」に推薦するなどということは、かつては考えにくかったことであるし、いわゆる高級官僚が自らの個人的な利益とからめた違法な行為を行なうなどということは想像もできないことであった。
 また、政治を含めさまざまな方面からの違法、不当な要請に対しては、いかなる状況においても、時にはこれに「身体を張って」、適正に対処すべきことは当然のことであったはずだからである。

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 私が、現時点でこのテーマに注目が高まりつつあることを好ましいと考えるもう1つの理由がある。それは、わが国の「官」を巡る環境が、私が当時危惧した好ましくない方向へさらに変化したことであり、この傾向を見直すきっかけになればと思うからである。
 正直なところ、旧著を世に問うて以来、「官」およびそれを構成している「公務員」の能力およびその社会に果たしている役割についての過小評価がさらに進んだように思う。おそらく、先に述べた組織の劣化とこの傾向の進展とは、相互に因果関係にあるのであろう。

 いずれにしても役人は、国家が国家として成立するための礎であり、これは洋の東西を問わず、また、歴史上古今を問わない事実であると考えている。世は移り時代は変わっても、しっかりした官僚制度と信頼に足る役人が国家、社会の礎であるという著者の考えにはいささかの変わりはない。敢えて旧著を世に問う所以である。

 『役人道入門』

久保田勇夫(くぼた・いさお):1942年生まれ。福岡県出身。66年、東京大学法学部卒業、大蔵省(現・財務省)入省。69年、オックスフォード大学経済学修士。課長補佐時代は税制改正、財政投融資計画、省内調整など国内の仕事を多く手がける。83年、財務官室長に就任し、以降、国際舞台でも活躍。サミット、G5、G7などの国際金融交渉にかかわり、議長として95年の日米金融協議をまとめる。国際金融局次長、関税局長を経て国土庁事務次官を最後に2000年に退官。都市基盤整備公団副総裁などを経て、現在、西日本シティ銀行会長および西日本フィナンシャルホールディングス会長。著書に『新しい国際金融』(有斐閣)、『日米金融交渉の真実』(日経BP社)などがある。