「就活前に読んでおきたかった!」と好評の『女子と就活』。刊行後に、「女性活用」が政策課題としてクローズアップされるなど、ますます「女子界」のライフスタイル事情は激変中です。そこで、共著者の白河桃子さんと常見陽平さんが、もう一回本気で「就・妊・婚」について話し合ってみました。
 前回の趣旨を一言でむりやり要約するなら「良い旦那をゲットせよ」。身も蓋もない結論ではありましたが、二人は決して皆さんを突き放したりはしません。
 最終回では、普通の僕たち私たちが幸せになるための働き方を考えました。キーワードは「ジム」(『ガンダム』に登場する大量生産型モビルスーツ)。

激変する「女子界」――結局は「経済」
常見:

 2012年に『女子と就活』を出版してからの2年間での「女子界」は大きく変化したと思うのですが、いかかがですか?

白河:

 確かに大きく変わりましたね。まず、三号年金の廃止が議論の俎上にのるようになりました。これは「空気の変化」が「制度の変化」へ結びついた例だと思います。

 私は経済産業省の「女性が輝く社会のあり方研究会」に参加していたのですが、そこでも三号年金は議論できないという「空気」でした。しかしまさかの経済産業諮問会議などの安倍総理のお膝元から、廃止まではいかなくても改正への動きが出てきたのには正直驚きました。

常見:

 なぜ急激に廃止への流れができたのでしょうか?

白河:

 おそらく「ジェンダーギャップ指数が世界で105位」では海外から投資が集まらないこと、人材として女性を活用することといった「経済的な発想」が背景にあったからでしょう。だからこそ数十年間ジェンダーや労働社会学の専門家が変えられなかったことが、急激に議論へと向かったのだと思います。

常見:

 なるほど。現在の女性を積極的に登用していこうという空気についてはどうお考えですか?

白河:

 「女性活用」という表現が気に入らない方もいらっしゃるようですが、私は悪いことではないと考えています。その議論においても、ここ一年で空気が大きく変わったと思います。

 以前の政府や経済界は簡単に言えばワーキングマザーに対して「やる気のある人だけきてくださいね。そうじゃない人は家で子育てしたいでしょ?」という態度でしたが、今は「どんどん働いてください!」というようになりました。財界が本気で動いていることから考えて、少子化的な事情ではなくて、経済的な事情であると言えると思います。

女性は「働かされ、産まされる」のか?――「追い風」にするという発想
常見:

 最近の政府が女性への態度を変化させていることを、女性はどうとらえたらいいのでしょうか?

白河:

 「働かされる/産まされる」という発想はよくないと思います。「三号年金はずされたら、専業主婦になりたい人はどうするの!」というような声が「働かされる」発想で、政府が出生値の目標値を立てることに反対の声が「産まされる」発想の例ですね。

政府の動きを否定的にはとらえずに、例えば国をあげて産んでほしいと言っているのだから、もし子供を産みたいという気持ちが少しでもあるのならば、「産めるチャンスが増えた」と考えるのがいいと思います。

 この件に関しては、ひとつの「機会」ととらえて、利用できるところは利用する。ただ「強制される!」と反射的に批判するのはもったいないのではないでしょうか。

常見:

 産みたい人が産める、働きたい人が働ける環境に向かっている、つまりは「追い風が吹いている」と考えるということですね。

白河:

 まさにその通りです。「働くこと」の視点で言えば、私は今「働く/働かない」権利に興味があります。女性にも「働いて、財産を築いていく権利」はあると思うのですが、それをみんな行使しようとしない。逆に自分には「働かない権利」があると思っている。

 それは日本では「母親になること」のプレッシャーが異常に強いことが関係していると思います。「これだけ大変なことをやるなら、働くことは免除されるだろう」という発想です。これはデータにも表れていて、多くの女性は「子供が欲しい」と考えているが、一方で「子どもを育てる」ことには閉塞感を感じている。これでは女性がなかなか結婚に「踏み出せない」のが当然です。

常見:

 なるほど。そして良い旦那を見つけられるか、そしてその旦那がずっと健康で働き続けてくれるかは「運任せ」のギャンブルみたいなものであるということですね。

白河:

 そうなんです。もし女性が「働かない権利」があると思い込み、自活しようとしないままなら、結婚というものは相当「リスクのある行為」となり、踏み込めないものとなるのです。ですから女性も働くことが当たり前と意識が広がり、その環境が整えば結婚や子育てに踏み出せるようになると思う。

やっぱり「普通に働け」――精神論でエリートは生まれない
白河:

 常見さんの労働三部作(『「できる人』という幻想』・『「就社志向」の研究』・『普通に働け』 )を読ませていただいたのですが、常見さんは一貫して突出して優秀な人ではなく、「普通の人」の味方ですよね。

常見:

 私は「普通の人が普通に活躍できる世の中」は「いい世」だと思っています。もちろん両輪として、「エリート育成」は大切で、エリート選抜の仕組みは一部の会社が頑張って運営しています。しかし日本は気合や精神論でエリートを作ろうとする傾向があります。みんなが「がんばれ!!気合だ!!」でエリート、つまり「ガンダム」にはなれないのです。

白河:

 そうですよね。また常見さんの三部作を読んで感じたのは、これらの本は正論を提示していて、普通の男性にとっての「働き方の福音」になりえるけれども、結局は日本の「普通に働く」モデルは男性のモデル。

 女子は「普通に働いたら、子供産めない」が現実なのです。ちょうど妊娠適齢期と会社の昇進試験が重なります。「この試験の前に産むのか、それとも受けた後に産むかどうしよう!」という話はよく聞く話です。

常見:

 白河さんの言う通りで、日本的雇用の問題点は、なされる議論の前提がいつも「長期雇用の男性」になりがちなことです。どうすれば女性は「普通に働き、普通に産める」のでしょうか?

白河:

 「普通に働き、普通に産める」ようにするために、私が今取り組んでいるのが、女性に「働くことは当たり前だ」という教育をすることです。

 やりがいや、社会にどれだけ貢献するかなど意識高く取り組む人だけが働く女性ではないということを伝え、女性が働くという行為は「当たり前」なんだという軸を持ってもらおうとしています。このあたりの意識は常見さんが書かれているテーマと共有されていると思います。

常見:

 女性が役員や部長となり、活躍されることは好ましいことです。でもその多くの方は子供がいないか、バツイチであるという現実もあります。そして彼女たちはそうした「成功」のために、魂とライフスタイルを「男化」して企業社会に適応してきた人々ですよね。

白河:

 今出世しているロールモデル女性は、「活躍する男性=ガンダム」の塗装を変えただけの「ピンクのガンダム」です。それだけ頑張らないと、仕事を続けることができなかったから、仕方がないのですが。でも、そろそろ会社に「ピンクのジム」が出てきて欲しいですね。

常見:

 男性もみんなガンダムをめざしたいわけではなく、ゆるゆる働ける環境も徐々にではあるが増えてきていると思います。女性は本当にまだまだこれからですよね。

白河:

 「ピンクのジム」が働く場所を作ってあげたいですね。

対談の音源が『陽平天国の乱』http://www.radiodays.jp/artist/show/700の46回~48回にアップされています。ぜひご視聴ください。

白河桃子:少子化ジャーナリスト、作家。東京生まれ。相模女子大客員教授、経産省「女性が輝く社会の在り方研究会」委員。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。齊藤英和氏(国立成育医療研究センター不妊診療科医長)とともに、東大、慶応、早稲田などに「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座」をボランティア出張授業。講演、テレビ出演多数。最新刊「『産む』と『働く』の教科書」

常見陽平:人材コンサルタント。1974年生まれ。北海道出身。一橋大学商学部卒業後、(株)リクルート入社。玩具メーカーに転じ、新卒採用を担当。その後フリーに。千葉商科大学などで非常勤講師を務める。『僕たちはガンダムのジムである』『「できる人」という幻想』『普通に働け』など就活、キャリア関連の著書多数。