Interview著者インタビュー

螺旋プロジェクト第3弾である、天野純希著『もののふの国』薬丸岳著『蒼色の大地』
の発売を記念して「天野純希×薬丸岳サイン会&トークバトル!」が2019年5月24日、東京・八重洲ブックセンターにて開催されました。
螺旋プロジェクト作品の中でそれぞれ中世・近代という隣接した時代を担当し、正面から「対立」というテーマを描き切った2作品。ならばどっちがより面白い小説か、決めようじゃないか……ということで開催されたのが当イベントです。
天野さんVS薬丸さんのビブリオバトルあり、乱入者あり(?)の、前代未聞のトークショーとなりました。当日の熱い模様を、お伝えします!

リングコールで両者入場

開始早々、会場に響き渡るリングコール。両者リングガール、リングボーイに先導されて入場し、会場が熱気に包まれました。

赤コーナー:天野さん(入場曲:NUMBER GIRL「SAMURAI」)
――自他共に認める最高傑作『もののふの国』で今、薬丸岳との決戦に挑む。侍たちの心に潜む虚無を描き続ける歴史小説界のあだち充。天野―純希―!
注:天野さんを長年応援する、丸善ラゾーナ川崎店の市川淳一さんからのコメントに「天野さんは歴史小説界のあだち充だ」とあり。作中、戦場で大きな戦果を上げる武士たちが、心に虚無感を抱えているところが、どこか「タッチ」のような味わいがあると評判。

青コーナー:薬丸さん(入場曲:カニエ・ウエスト「Power」)
――新境地のド派手エンタメ『蒼色の大地』で天野純希をKOできるか。より面白いアイディアが出るまで、8時間外を散歩する小説の求道者。薬丸―岳―!
注:「小説BOC2」掲載の「螺旋」イベントレポートより。小説のアイディアが出るまで、池袋から新座まで約20キロ歩いたことがあるそう。

天野純希VS薬丸岳 ビブリオバトル!

薬丸岳さん(以下、薬):こんな登場、初めてやりました。(笑)
天野純希さん(以下、天):僕もです。
――のっけからこんなことをやらせてしまいすみません(笑)。両者入場が終わったところで、早速ビブリオバトルを始めたいと思います。天野さんが、薬丸さんの『蒼色の大地』を、薬丸さんが天野さんの『もののふの国』をお互いにプレゼンし合い、どちらが読みたくなったかを会場のお客さんに決めていただく、という趣向です。それでは天野さんの先攻で、よろしくお願いいたします。

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天:『蒼色の大地』、最高に面白いです! 海族・山族の男女が海賊と海軍の争いの渦に巻き込まれながら、「対立」の運命に抗っていく物語で、スリル・スピード・迫力に満ちた、これぞエンタメ! な小説でした。
作品の主題は「対立」ですが、その先にある「お互いを理解すること」まで描かれているのがこの作品の魅力。明治時代を描いた歴史ものであるのに、余計な歴史的事実がいちいち書かれていないので、エンタメとしての切れ味が非常に鋭い。これは歴史小説家にはなかなか難しい技です。それでいて、薬丸さんの持ち味である「弱者への優しさ」も忘れていない。ファンの方も満足できる作品でした。
あ、『もののふの国』と共通の登場人物が存在したり、物語がリンクしているところも面白いので、ぜひ両方読んでくださいね。

薬:こうやって面と向かって褒められるの、恥ずかしいですね。(笑)
――「トークバトル」と言いながらも、目の前で褒め合うことになりました(笑)。では続いて薬丸さん、お願いいたします。

薬:天野さんのプレゼンは素晴らしかったですが、この勝負、僕の勝ちだと思います。それぐらい『もののふの国』、イチオシです!
源頼朝や織田信長など歴史上の英傑たちが、実は海と山の血を引いていて、彼らは歴史にある「役割」を背負わされて戦っていた......というお話。
僕は歴史が苦手なんですが、歴史小説をこんなにすらすら読めたのは初めてです。読んでいると知らない歴史上の人物や事件も登場するのですが、それを調べるとさらに面白くなる、というループにはまる。読めば読むほど歴史が好きになる。これはもう、全部の学校に教科書の副読本として置くことをオススメします! うちの妻も大絶賛でした(笑)。もちろんこちらも『蒼色の大地』との繋がりがあるので、合わせてお楽しみください。

(後半は7/26(金)に公開予定です。)