あらすじ

 家電量販店の店員・遠藤二郎は、イタリアで修行した「エクソシスト」というもう一つの顔を持つ。遠藤は他人の発する「SOS」を見過ごせない性格だった。ある日、知り合いの「辺見のお姉さん」にひきこもりの息子・眞人の悪魔祓いを依頼され、辺見家に赴く。
 一方、桑原システムの社員・五十嵐真は、20分間で300億円の損失を出した菩薩証券の株誤発注事故の調査を命じられる。 菩薩証券は、ミスの原因をシステムのせいにしたがっているという。聞き取り調査を始めた五十嵐は、なぜか奇怪な幻想に翻弄されていく。
 眞人の部屋で「西遊記」を発見する遠藤。そして五十嵐の前には異形の猿が......。これは現実か妄想か。二つの物語のゆくえはいかに。

著者略歴

伊坂幸太郎(いさか・こうたろう)
1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒。2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。 04年に『アヒルと鴨とコインロッカー』で吉川英治文学新人賞を、短編「死神の精度」で日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。 08年には『ゴールデンスランバー』で本屋大賞、山本周五郎賞を受賞。近著に『あるキング』がある。 本作は、漫画家・五十嵐大介氏と共同で構想した世界を、それぞれ独自に小説とコミックの二つの表現方法で競作した、初の試みである。