私なりの『罪と罰』を描きたかった、と言ったら、あまりにも大それているでしょうか。
日頃から、事件報道に接するたびに、ここにある罪とは、いったいどんなふうに形造られて来たのだろうと考えてみるのが癖になっています。何が発端になって、そして何が層を成して、その人に一線を越えさせてしまったのだろうか、と。
すると、自分の内なる小説家のプリズムとも言えるものが既存のモラルなどとはまったく無関係なところで、罪の濃淡や明度などを選り分けて、私の心に映すのです。そこで知るのは、犯罪と罪は必ずしも一致しないということ。犯罪者と罪人(つみびと)も、またしかり。そして、もちろん同一である場合も。
『つみびと』では、私のプリズムによってさまざまに色分けされた心模様を、もう一度束ね直してみようと思いました。
子供たちの受難は、そのまますべての人間の受難にも通じています。
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灼熱の夏、彼女はなぜ幼な子二人を置き去りにしたのか。追い詰められた母親、死に行く子供たち。小説でしか描けない〈現実〉がある――虐げられる者たちの心理に深く分け入る迫真の衝撃作。
初版刊行日:2019/5/22
定価本体:1600円(税別)
ISBNコード:ISBN978-4-12-005192-0