流人道中記

浅田次郎

読売新聞朝刊大好評連載、待望の書籍化。 2020年3月9日刊行決定

画・宇野信哉

万延元年(1860年)。姦通の罪を犯したという旗本・青山玄蕃に、 奉行所は青山家の所領安堵と引き替えに切腹を言い渡す。 だがこの男の答えは一つ。 「痛えからいやだ」。 玄蕃には蝦夷松前藩への流罪判決が下り、押送人に選ばれた 十九歳の見習与力・石川乙次郎とともに、奥州街道を北へ北へと歩んでゆく。 口も態度も悪いろくでなしの玄蕃だが、時折見せる所作はまさに武士の鑑。 道中で行き会う、抜き差しならぬ事情を抱えた人々は、 その優しさに満ちた機転に救われてゆく。 この男、一体何者なのか。そして男が犯した本当の罪とは?

史料に残りえなかった歴史を書きたいと思い続けている。
小説家にしか許されぬ仕事だからである。
そのためには、残りえた史料をなるたけ多く深く読み、名もなき人々の悲しみ喜びを想像しなければならない。
たとえば、流罪とされた者はどのように護送されたのであろうか。島流しでも所払いでもなく、預(あずけ)とされた武士はどのような手続きを経て、誰と、どこへ向かったのであろう。

読売新聞「連載開始の言葉」より