連鎖

黒川博行

経営に行き詰まった社長の自死。誰もがそう考えていた。しかし......
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闇の底から浮かび上がる複数の犯罪。地を這うような捜査の行方は――
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本格警察小説

連鎖

黒川博行

好評発売中!
単行本:2200円(10%税込)
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NEWS
  • 2022/11/21イベント情報12月4日(日)14:00~

    『連鎖』刊行記念 サイン会のお知らせ

    『連鎖』の刊行を記念して、黒川博行さんのサイン会を開催致いたします!
    ■日時:2022年12月4日(日)14:00~
    ■対象:紀伊國屋書店梅田本店にて、『連鎖』をご予約・ご購入頂いた、先着100名様に②番カウンターにて整理券を配布致します。 詳細は紀伊國屋書店梅田本店のイベント告知ページをご覧下さい。
    https://store.kinokuniya.co.jp/event/1667720869/

黒川博行『連鎖』(中央公論新社)刊行記念

勤ちゃんのおすすめ映画

大阪府警京橋署刑事第二課暴犯係で「ジロさん(磯野次郎)」とバディを組む「勤ちゃん(上坂(うえさか)勤(つとむ))」は無類の映画マニア。作中で交わされる映画に関する会話を集めてみました。映像学科卒の「愛され系」変わり種刑事、勤ちゃんの蘊蓄(うんちく)をお楽しみください。
  • 「映画、見たいです」
  • 「おもしろそうなんがあるんか」
  • 「最近はないですね」
  • 「ないのに見たいは、おかしいやろ」
  • 「ジロさん、なんの期待もせずに見て、思いがけずおもしろいのに当たったときが、映画フリークの至福ですねん」
  • 「歪んどるな」

「こないだ見た『スノー・ロワイヤル』なかなかのもんでしたわ。コメディータッチのシナリオがよろしい。『ファーゴ』にちょっと似てたかな」

  • 「スノー・ロワイヤル」(2019年アメリカ)
    監督:ハンス・ペテル・モランド 脚本:フランク・ボールドウィン 出演:リーアム・ニーソン/ ローラ・ダーン
  • 「ファーゴ」(1996年アメリカ)
    監督:ジョエル・コーエン 脚本:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン 出演:フランシス・マクドーマン/ウィリアム・H・メイシー/スティーヴ・ブシェミ/ピーター・ストーメア

『ウインド・リバー』いう映画、観ました? ようできてますよ」

  • 「ウインド・リバー」(2017年アメリカ)
    監督・脚本:テイラー・シェリダン 主演:ジェレミー・レナー/エリザベス・オルセン

「ジロさんは、数はけっこう観てるやないですか。どんな映画が好きですか」

「あえていうたらSFかな。『2001年宇宙の旅』『ブレードランナー』......『マーズ・アタック!』いうのもよかった」

「なんと、SFクラシックを押さえてますね。スタンリー・キューブリック、リドリー・スコット、ティム・バートン。『ターミネーター』『エイリアン』はどうですか」

「ええな。みんな観た」

「話が合いますね。ティム・バートンの『スリーピー・ホロウ』は」

「観てへん」

「そら、観なあきません。クリスティーナ・リッチがかわいい。ミステリーとしてもようできたシナリオです」

  • 「2001年宇宙の旅」(1968年イギリス、アメリカ)
    監督:スタンリー・キューブリック 脚本:スタンリー・キューブリック、アーサー・C・クラーク 主演:キア・デュリア/ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルベスター、ダグラス・レイン
  • 「ブレードランナー」(1982年アメリカ)
    監督:リドリー・スコット 脚本:ハンプトン・ハンチャー、デヴィット・ピープルズ 主演:ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング、エドワード・ジェームズ・オルモス
  • 「マーズ・アタック!」(1996年アメリカ)
    監督:ティム・バートン 脚本:ジョナサン・ジェイムズ 主演:ジャック・ニコルソン、グレン・クローズ、アネット・ベニング、ピアース・ブロスナン
  • 「ターミネーター」(1984年アメリカ)
    監督:ジェームズ・キャメロン 脚本:ジェームズ・キャメロン、ゲイル・アンハード 主演:アーノルド・シュワルツネッガー、マイケル・ビーン、リンダ・ハミルトン
  • 「エイリアン」(1979年アメリカ)
    監督:リドリー・スコット 脚本:ダン・オバノン 主演:トム・スケリット、シガニー・ウィーバー
  • 「スリーピー・ホロウ」(1999年アメリカ)
    監督:ティム・バートンアンドリュー・ケビン・ウォーカー 脚本:アンドリュー・ケビン・ウォーカー 主演:ジョニー・デップ、クリスティーナ・リッチ

「BLの映画て、あるんか」

「少ないですね。ぱっと思い浮かぶのは『ブロークバック・マウンテン』かな。あれはよかった。特に、ヒース・レジャーがね」

 ヒース・レジャーは『ダークナイト』でバットマンの仇役であるジョーカーを演じたが、薬物の過剰摂取で急死し、死後、アカデミー賞助演男優賞を受賞した、と上坂はいう。

「ぜひ観てください。『ブロークバック・マウンテン』

  • 「ブロークバック・マウンテン」(2005年アメリカ)
    監督:アン・リー 脚本:ラリー・マクマートリー、ダイアナ・オサナ 主演:ヒース・レジャー、ジェイク・ジレンホール
  • 「ダークナイト」(2008年アメリカ、イギリス)
    監督:クリストファー・ノーラン 脚本:クリストファー・ノーラン、ジョナサン・ノーラン 主演:クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、ヒース・レジャー

「脚本がタランティーノで、監督がトニー・スコット。紅一点のパトリシア・アークエットがめちゃきれいで、そこにクリスチャン・スレーターやゲイリー・オールドマン、クリストファー・ウォーケン、デニス・ホッパー、ジェームズ・ガンドルフィーニやらの曲者がからんで、あれはほんまにハードボイルドムービーの金字塔というか、極北というか―」

 映画オタク―。それも重症の。ただでさえよく喋る上坂が映画の講釈をはじめたらとまらない。好きなように喋らせておく。

「―ジロさん、聞いてないでしょ。ぼくの話」

「デニス・ホッパー、知ってる」
 視線をもどした。「『イージー・ライダー』や」

「正解です」

「クリストファー・ウォーケンは『ディア・ハンター』やろ」

「すばらしい」上坂は手を叩く。

  • 「トゥルー・ロマンス」(1993年アメリカ)
    監督:トニー・スコット 脚本:クエンティン・タランティーノ 主演:クリスチャン・スレーター、パトリシア・アークエット
  • 「イージー・ライダー」(1969年アメリカ)
    監督:デニス・ホッパー 脚本:デニス・ホッパー、ピーター・フォンダ、テリー・サザーン 主演:ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、ジャック・ニコルソン
  • 「マーズ・アタック!」(1996年アメリカ)
    監督:ティム・バートン 脚本:ジョナサン・ジェイムズ 主演:ジャック・ニコルソン、グレン・クローズ、アネット・ベニング、ピアース・ブロスナン
  • 「ディア・ハンター」(1978年アメリカ)
    監督:マイケル・チミノ 脚本:デリック・ウオッシュバーン 主演:ロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン

「ジロさんにぜひとも観てもらいたい映画がありますねん。『スリー・ビルボード』。......フランシス・マクドーマンド、サム・ロックウェル、ウディ・ハレルソン。達者な役者がそろてるし、なんというてもシナリオがよろしい。起承転結の伏線と登場人物のキャラクターが結末でみごとにひっくり返る。びっくりしますよ」

「その、フランシスなんとかいうのは、ええ女か」

「おばさんです。六十すぎかな」

「六十は行きすぎやな。おれ的には」

「三十すぎがふたりおると思たらええんです」

「おれはひとりで三十が好みなんや」

  • 「スリー・ビルボード」(2017年アメリカ)
    監督・脚本:マーティン・マクドナー

「誰かに似てますよね」

「誰や。経理の田中和枝さんか」

 交通課の窓口にいる田中さんは色白で小顔、すらっと背が高い。

「ちがいます。誰やろ......」

 上坂は額に手をあてて考えた。「――そう、ジェニファー・ジェイソン・リーや」

「知らんな」

「タランティーノの『ヘイトフル・エイト』。ジェニファーの怪演はすごかった」

  • 「ヘイトフル・エイト」(2015年アメリカ)
    監督・脚本:クエンティン・タランティーノ 主演:サミュエル・L・ジャクソン
    カート・ラッセルジェニファー・ジェイソン・リー

「ジロさん、『ガタカ』いう映画、知ってますか」

「知らんな。ガタピンか」

「それはガチャピンでしょ。近未来の監視社会を描いたSF映画です。遺伝子操作によって生まれた人間を適正者、自然に生まれた人間を不適正者に峻別して、市民のプライバシーを徹底して監視しますねん。監督はアンドリュー・ニコル。ユマ・サーマンとイーサン・ホークとジュード・ロウが、これがまた適役で......」

  • 「ガタカ」(1997年アメリカ)

「天高く馬肥ゆる秋やな」

「なんで馬なんですかね。熊も猪も鹿も、秋の実りを食うて肥るのに」

「むかし、中国の北方民族は秋になると馬に乗って南の収穫物を奪いにきた。秋は危ないぞ、警戒せんとあかんぞ、という警句やな」

「へーえ、『七人の侍』ですね。黒澤の」

「あれは名作や」

「ぼく、二十回は観てます。土砂降りの雨、泥まみれの合戦シーン。一九五四年の公開ですよ。敗戦から十年もせんうちに、あれだけの大傑作が世に出たんやから、日本映画はすごかった。いまは見る影もないけど」

「アニメは元気やないか」

「ジロさん、映画は実写です。生身の俳優に勝るキャラはありません」

  • 「七人の侍」(1954年、日本)
    監督:黒澤 明 脚本:黒澤 明、橋本 忍、小国英雄 主演:三船敏郎、志村 喬、津島恵子

「ジョーカーはよろしいね。ホアキン・フェニックス畢生の名演技。二十キロ以上も減量して撮影に挑んだんです。......それと、『パラサイト 半地下の家族』。長女役のパク・ソダムの存在感にやられましたね。......ダニエル・クレイグもええな。歴代ジェームズ・ボンドの中でいちばんです。......ボンドガールのナンバーワンはダニエラ・ビアンキで......」

「ジョーカー役で、ヒース・レジャーはアカデミー賞をとりましたよね。助演男優賞」
尾野がいった。
「尾野くん、君は見どころがある」

 上坂はよろこんだ。「ホアキン・フェニックスもジョーカーを演って主演男優賞をとった。ジョーカーは役者のジャックポットなんや」

「ジョーカーの恋人もよろしいね。マーゴット・ロビー」

「尾野くん、君はますます見どころがある。『スーサイド・スクワッド』、観たんか」

「マーゴット・ロビーのハーレイ・クイン、エロいやないですか」

「よっしゃ。帰りの車中の楽しみができた。映画を語り明かそうぜ」

  • 「パラサイト 半地下の家族」(2019年韓国)
    監督:ポン・ジュノ 脚本:ポン・ジュノ、ハン・ジンウォン 主演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジュン、チェ・ウシク
  • 「スーサイド・スクワット」(2016年アメリカ)
    監督・脚本:デヴィット・エア 主演:ウィル・スミス、ジャレッド・レト、マーゴット・ロビー

「ジロさん、『張込み』いう映画、観たことありますか」

「知らんな」

「松本清張原作の邦画です。野村芳太郎監督、橋本忍脚本。大木実と宮口精二が東京から佐賀へ行って、犯人が現れるのを待って張り込むんです」

「ほう、そうか......」

「監督、脚本がよろしい。とにかく丁寧な作りで、地味やけど緊迫感がある。原作は短編やけど、映像にするときはあんなふうに膨らますんやで、いうお手本みたいな映画です」

「原作も読むんか」

「ようできた映画はね」

「原作を超える映画て、めったにないんとちがうんか」

「小説と映画は別物ですわ。......『砂の器』とか『飢餓海峡』とか『復讐するは我にあり』とか、ミステリー系の小説にはええ映画が多いです」

  • 「張込み」(1958年日本)
  • 「砂の器」(1974年日本)
    監督:野村芳太郎 脚本:橋本 忍、山田洋次 主演:丹波哲郎、森田健作。加藤 剛
  • 「餓海海峡」(1956年日本)
    監督:内田吐夢 脚本:鈴木尚之 主演:高倉 健、三國連太郎、左 幸子
  • 「復讐するは我にあり」(1979年日本)
    監督:今村昌平 脚本:馬場 当、池端俊策 主演:緒形 拳、三國連太郎、ミヤコ蝶々、倍賞美津子

「なんでも観るんやな」

「観ますよ。邦画やと時代劇は」

「お勧めは」

『七人の侍』『用心棒』『椿三十郎』『切腹』......。『座頭市』『壬生義士伝』『たそがれ清兵衛』『必死剣 鳥刺し』もよかったかな」

「黒澤の映画だけやな。おれが観たんは」

「そら羨ましい。観るべき映画がいっぱいあるんやから」

「観るべき、とは思わんけどな」

「ジロさん、映画は人生を豊かにしてくれます」

  • 「用心棒」(1961年日本)
    監督:黒澤 明 脚本:黒澤 明、菊島隆三 主演:三船敏郎、仲代達矢、山田五十鈴、司 葉子
  • 「椿三十郎」(1962年日本)
    監督:黒澤 明 脚本:黒澤 明、菊島隆三、小国英雄 主演:三船敏郎、仲代達矢、加山雄三
  • 「切腹」(1962年日本)
    監督:小林正樹 脚本:橋本 忍 主演:仲代達矢、石浜 朗、岩下志麻
  • 「座頭市」(1989年日本)
    監督:勝新太郎 脚本:勝新太郎、中村 努、市山達巳、中岡京平 主演:勝新太郎、樋口可南子 *北野 武 監督・脚本・主演のリメイク作品もあり(2003年)
  • 「壬生義士伝」(2003年日本)
    監督:滝田洋二郎 脚本:中島丈博 主演:中井貴一、三宅裕司
  • 「たそがれ清兵衛」(2002年日本)
    監督:山田洋次 脚本:山田洋次、朝間義隆 主演:真田広之、宮沢りえ
  • 「必死剣 鳥刺し」(2010年日本)
    監督:平山秀幸 脚本:伊藤秀裕、江良 至 主演:豊川悦司、池脇千鶴

「おまえも眼が赤いぞ」角谷は上坂を見た。

「血を吸うたんです」

「なんやて......」

「クリストファー・リーのドラキュラ伯爵は、美女の血を吸うたとたん、眼が真っ赤になるんです」

「賢いのう、いうことが」

「コッポラの『ドラキュラ』はブラム・ストーカーの原作に忠実です。ドラキュラはゲイリー・オールドマンで、ヘルシング教授はアンソニー・ホプキンス。名優ですね。キアヌ・リーブスとウィノナ・ライダーが......」

「もうええ。よう分かった。わしは映画を観ぃへんのや」

  • 「ドラキュラ」(1992年アメリカ)
    監督:フランシス・コッポラ 脚本:ジェイムズ・V・ハート

後妻業の女......か。映画の観すぎとちがうか」

「あの映画、大竹しのぶが巧かったですね。『黒い家』でもサイコパスの女を演じて、すごい怖かった」

  • 「後妻業の女」(2016年日本)
    監督・脚本:鶴橋康夫 主演:大竹しのぶ、豊川悦司
  • 「黒い家」(1999年日本)
    監督:森田芳光 脚本:貴志祐介、Sumio Omori 主演:大竹しのぶ、西村まさ彦

「めっちゃおもしろかったんですわ。『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』。ドイツのシリアルキラーをモデルにした実話ふうの映画やけど、出てくる役者がどれもこれも不細工で、あそこまでリアルに撮ったらコメディーですね」

 シリアルキラーはアルコール依存症の労働者。毎夜、アパートの近くの安酒場で呷るように酒を飲み、店にたむろする中年、老年の娼婦を拾ってアパートに帰る。ほとんど衝動的に四人の娼婦を殺し、死体をクロゼットに隠す。部屋には腐臭が漂い、死体にわいたウジが、床の隙間から階下で食事をしている家族のスープ皿に落ちたりする――。「笑いましたね。まさにコメディーです」

  • 「屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ」(2019年、ドイツ、フランス)
    監督:ファティ・アキン 主演:ヨナス・ダラー

「ウディ・ハレルソンとジュリエット・ルイスの『ナチュラル・ボーン・キラーズ』もよかった。『羊たちの沈黙』もね。ぼく、シリアルキラーもんが好きですねん」

  • 「ナチュラル・ボーン・キラーズ」(1994年アメリカ)
    監督:オリバー・ストーン 脚本:デヴィッド・ヴェロズ、リチャード・ルトウスキー、オリバー・ストーン
  • 「羊たちの沈黙」(1991年アメリカ)
    監督:ジョナサン・デミ 脚本:テッド・タリー 主演:ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス

「ジロさんは『麻雀放浪記』観ましたか」

「観た。DVDでな」学生のころだ。監督は和田誠だったか。

「高品格(たかしなかく)がよかったですね。出目徳を演(や)った」

「おれは加賀まりこの牌を捌(さば)く手付きが気に入らんかったな。まるっきりの素人さんや」

「そういうシーンて、大事ですよね。将棋の棋士が駒を指すとこ、カジノのディーラーがカードを切るとこ、ピアニストがピアノを弾くとこ、プロはプロらしく撮るべきです」

  • 「麻雀放浪記」(1984年日本)
    監督:和田 誠 脚本:澤井信一郎 主演:真田広之、高品格、大竹しのぶ、加賀まりこ

「ジロさんは『復讐するは我にあり』いう映画、観ましたか」

「観てへんな」

「ぜひ観てください。緒形拳がめっちゃ巧いんです。小川真由美もね」

 今村昌平監督の犯罪映画だと上坂はいう。「犯人が緒形拳で、刑事がフランキー堺です。取調べの場面が多いんやけど、そこがまた真に迫ってて、ふたりの博多弁の演技を見るだけでも値打ちがあります」

「おれは『天国と地獄』がよかったな」

「あれも名作です。結末の拘置所の場面、犯人役の山﨑努の金網越しの怒りと慟哭はすごかったですね」

「ドウコクて、なんや」

「泣き喚くことです」

「いまどき、慟哭いうのは見んな」

  • 「天国と地獄」(1963年日本)
    監督:黒澤 明 脚本:黒澤 明、菊島隆三、久板栄二郎、小国英雄 主演:三船敏郎、仲代達矢、香川京子

「アラン・パーカーの『ミシシッピー・バーニング』いう映画、観ましたか」

「知らんな。観るわけない」

「大傑作です。ウィレム・デフォーがFBI捜査官で、その部下がジーン・ハックマン。デフォーが、死体が沼に沈んでる、と読んで捜索をしたときは数百人の軍隊を動員しました。大捜索は空振りやったけど、デフォーは屁とも思てません」

「おれはFBI捜査官やない」

「死体は結局、農場に埋められてたんやけど、それを掘り起こすのにショベルローダーやブルドーザーを何台も使うてました」

「ここはミシシッピーやない」兵庫県の但馬だ。

  • 「ミシシッピー・バーニング」(1988年アメリカ)
    脚本:クリス・ジェロルモ

映画の話だけじゃない! 勤ちゃんとジロさんの活躍ぶりは、本編で、ぜひお楽しみ下さい。

連鎖

黒川博行 著

発売日:2022/11/21 定価:2200円(10%税込) ISBNコード:ISBN978-4-12-005594-2
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