2022 04/08
著者に聞く

『中学英語「再」入門』/澤井康佑インタビュー

中学英語が出来なければ、英語は出来ません。好評前著『英文法再入門』に続き、『中学英語「再」入門』を刊行した澤井康佑さんにお話を聞きました。

――今回は前著と違って「中学英語」とタイトルについていますが、前著とどう違うのでしょうか。

澤井:前著のタイトルは『英文法再入門』でしたが、これは『高校英語「再」入門』ともいえる内容でした。
それに対して、今回の本は『中学英語「再」入門』です。「高校英語か中学英語か」というのが、最も明確な2冊の差です。

そしてもう1つ、前著は「真の入門書」であることを目指して執筆したのですが、今回はいわば「入門の入門」です。入門書よりもさらに一歩手前の位置から英語を学びなおしたい方々を対象としています。
したがって、一般的には「今作→前作」という流れで読んでいただきたいと思います。
ただ、今回の本には、高校レベルの人にも盲点になっている内容も少なからず盛り込んであります。「前作→今作」というルートで読んでくださっても、実のある学びになるようにしました。
ぜひ『英文法再入門』をお読みくださった方々にもお手に取っていただきたいです。

――中学英語についての参考書はたくさんあります。一方で中学英語についての新書はあまり見かけないと思います。本書は、他の中学英語の参考書とはどう違い、また、他の新書の英語の本とはどう違うのでしょうか。

澤井:参考書の大半は、教科書に準じているものだといえます。総花的なものになる傾向があります。この結果、「漏れはないが肝もない」という感じのものが多いのです。
もちろん、やりとければしかるべき力がつくことは間違いないのですが、無難な記述に終始しているため、面白さやダイナミズムが感じられず、そもそも最後まで辿り着くことが困難なのです。
これは皆さんの、これまでの“参考書体験”からも明らかだと思います。意欲をもって参考書を買っても、「ちょっと読んで、あとはそのまま」となってしまった本が多かったのではないでしょうか。

それに対して、本書は新書です。新書には、特に高い可読性が求められるはずです。この要求を満たすために、本書は味気ない参考書、生気を欠く教本とするのではなく、“読み物”として、手軽に着実に読み進められるものにしました。
そしてメリハリのある作品にするために、一般的に中学で扱う内容であっても、『英文法再入門』に回すべきもの(「高校英語」で扱えばいいもの)は大胆に切り、逆に重要部分でありながら、一般の「中学英語」では説明が不十分な部分は、力点を置いて詳述しました。
目指したのは、密度の濃い、躍動感のある、真の中学英語教本です。

次に、他の新書の英語の本とどう違うか、という点ですが、これは「中学英語である」ということ自体が特徴です。
英語関連の新書は、これまで数多く発行されてきました。良書、名著も多いのですが、“ザ・中学英語”ともいうべき新書は見当たりません。「新書ゆえ可読性が高く、寝っ転がりながらでも読めて、それでいて中学英語の肝を押さえることが出来る本」はこれまでになかったはずです。

――そのような本書執筆に当たって、苦労した点、特に留意した点がありましたらお教えください。

澤井:私は書籍というものは、それが学問・学びに関するものであっても、エンターテイメントでなければならない、多少なりともその気配が感じられるものでなければならないと考えています。
エンターテイメント性を宿すための方策は、作品ごとに違うと思うのですが、今作では「英語と日本語との比較」にしようと決めました。日本語との比較の中で英語を学べば、日本語と似ている部分はある種の親しみを感じながら、そして異なる部分は刺激を感じながら学べます。「同じだな!」「こう違うんだ!」、こういった感興が湧く学びは一種のエンターテイメントだといえるはずです。少しでも多くの部分を、魅力ある「日英語比較論」にするということが、執筆の際に最も苦心した点です。
ちなみに、専門書は別として、英語の教本で、日英語の比較を軸に据えた作品は見当たりません。本書をその嚆矢にしたいという気持ちもありました。かなり手こずった部分もあるのですが、どうにか比較論をあちらこちらにちりばめて、本書のサブタイトル「日本語と比べて学ぶ14講」を偽りのない看板に出来たのではないかと考えています。

――それでは、中学英語を学ぶうえで、中学生が最も気をつけるべきこと、あるいは努力すべきことはどんなことでしょうか。また、既習の私たち大人が学びなおすうえで最も気をつけることはなんでしょうか。

澤井:中学生であれ、学び直しの社会人であれ、中学英語を学ぶうえでの最大の課題は同じです。
それは「文法規則の習得を、強く意識しながら学ぶ」ということです。
英語は日本語とは全く異なる言語系統に属する外国語です。日本語とは異質のルール(文法規則)に従って文が組み立てられている以上、このルールを学ばずして英語が理解できるようになるはずがありません。
ところが一般的な中学英語では、事実上、文法規則の習得がカリキュラムの主要事項になっていないのです。本書執筆の最大の動機は、この不備を補いたいというものでした。中学レベルの文法規則の習得を前面に押し出した作品を、読み物としてお届けしたいという強い願いをもとに作品を完成させました。

――ところで、澤井さんは中学時代、どんなふうに英語を勉強していましたか。良かった点、悪かった点がありましたら、それもお教えください。

澤井:良かった点は、定期テストで高得点を狙った際の学習においては、復習をしたあとに、しっかりと音読をしたということです。逆に悪かった点は、音読を3年間を通した日課としていなかったということです。気が向かなかった時期はずっとサボっていました。
面白いことに、音読をきちんと実行していた時期の定期テストの点と、実行していなかった時期の点は、くっきりと明暗が分かれました。このことは当時から気づいていましたが、怠惰さに負けて、音読から逃げていた時期が少なからずあったということが最大の反省点です。
言語ですから「はじめに音ありき」です。単語の意味と文法構造をしっかりと理解した文を繰り返し音読、そして筆写するということは、語学の基本中の基本です。

――最後に、英語学習者に向けてメッセージがありましたらお願いします。

澤井:「繰り返す」ということの大切さを、常に心に留め置いていただきたいです。
適切な教材、カリキュラムを提供するというのは完全に教務者の責任です。
一方、学習者側は、まずはそれをきちんとこなし、その後、倦まずたゆまず繰り返さなければなりません。
今回の作品でいえば、まずは再読すること、そして、本文中の例文を繰り返し音読・筆写する必要があります。これまで英語が苦手だった、英語が得意になれる気がしない、という方であっても、本書を読み、再読し、例文を徹底的に復習すれば、必ず光が見えてきます。
ぜひ本書との出会いをきっかけに、本格的な、そして充実した英語学習の道を歩んでいってください。皆さんのご健闘を心よりお祈りしています。

澤井康佑(さわい・こうすけ)

1972年神奈川県生.慶應義塾大学文学部卒業.予備校,中学,高校で英語を教える.
主著『英文法再入門』(中公新書,2021),『一生モノの英文法』(講談社現代新書,2012),『一生モノの英文法COMPLETE』ベレ出版,2015),『一生モノの英語力を身につけるたったひとつの学習法』(講談社+α新書,2017),『超基礎がため澤井康佑の英文読解教室』(旺文社,2018),『マンガでカンタン! 中学英語は7日間でやり直せる。』(関谷由香理漫画.学研プラス,2018),『ドリルでカンタン! 中学英語は7日間でやり直せる。』(関谷由香理漫画.学研プラス,2020),『図解でカンタン! 中学英語は7日間でやり直せる。』(関谷由香理漫画.学研プラス,2022)