2017 07/26
私の好きな中公新書3冊

洋の東西、歴史の遠近/出口治明

小田部雄次『皇族 天皇家の近現代史』
山室信一『キメラ―満洲国の肖像 増補版』
藤沢道郎『物語 イタリアの歴史 解体から統一まで』

名作揃いの中公新書の中から3冊を選んで欲しい、との依頼を受けた。2500冊近いリストを眺めながら強く印象に残ったものを書き出していくと、あっという間に二桁になってしまった。それぞれに個性があるので、ベストの3冊など選べるはずがない、ということがよく分かった。従って、現時点で僕の脳裏に浮かんだ3冊、ということでお許しいただきたい。

先ず、小田部雄次『皇族』。天皇陛下のご退位についての特例法が成立したが、皇室の将来を巡って女性宮家の創設や旧皇族の復帰などがこれから検討されようとしている。ただし、旧皇族の現況については殆ど知られていない。本書は、旧皇族の全貌を描いた良書であり具体的なデータも豊富で、これ1冊を読めば旧皇族についてのあらましが頭に入る。皇室の将来を考える全ての人に読んで貰いたい1冊だ。

次は、山室信一『キメラ』。わが国を焦土に導いた第二次世界大戦。その発端は満洲事変にあるというのが、大方の見方ではないか。満洲事変や満洲国の来し方を学ぶことは、これからのわが国の在り方を構想する上で不可欠だと考えるが、本書は満洲国理解のおそらく最良の手引書である。

最後に、藤沢道郎『物語 イタリアの歴史』。中公新書と言えば歴史物語シリーズ。どれも面白いが、僕は本書が一番好きだ。

出口治明(でぐち・はるあき)

1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、1972年に日本生命保険相互会社に入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2006年に生命保険準備会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業。2013年に代表取締役会長就任。2017年6月から創業者として、ライフネット生命の広報活動・若手育成に従事。
主な著書に、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『直球勝負の会社』(ダイヤモンド社)、『生命保険とのつき合い方』(岩波新書)、『『働き方』の教科書』(新潮社)、『人生を面白くする 本物の教養』(幻冬舎新書)、『働く君に伝えたい「お金」の教養』(ポプラ社)、『世界史の10人』(文藝春秋)、『「全世界史」講義Ⅰ・Ⅱ』(新潮社)など。