中公選書第1回配本中の一冊『萩原朔太郎』(野村喜和夫著、2011年11月刊)が、このたび、第3回鮎川信夫賞(詩論集部門)を受賞しました。
本書は評論でも研究書でもなく、「評釈つき詩集」だと著者は書いています。大枠は評伝・解釈を付けた詩集であり、それゆえ、入門書的関心の読者をも引きこめる本ですが、一方で、「地面の詩学」「身体の詩/詩の身体」「母性棄却」「姦通系」など、独自の用語を駆使して、朔太郎に深く斬り込んだ高度な内容を併せ持ちます。読者を充分に楽しませつつ、同時に、豊かで不気味な詩世界に導く、まさに「たくらみ」に満ちた本です。
今回の評価をきっかけに、そうした形式上の「新しさ」もぜひ注目して頂きたいと思います。