
ニューヨークがなかったら、小説を書いていなかったかもしれない。
というのはカッコつけ過ぎかもしれないけど、事実です。この辺りの事情はどこかで詳しく書くことがあるかもしれないが、6月、久々にそのニューヨークに行ってきた。旅に出れば「何を食べた」という話題になるのが普通だが、堂場の場合、基本的に「食べ歩きの旅」はしません。特にアメリカでは、味を楽しもうと思っても無理......異論はあるでしょうが、個人的には食の不毛地帯だと思います。
もちろん、ニューヨークは大都会なので、その気になれば超がつく高級なレストランはいくらでもある。ただし堂場のニューヨークの旅は、そもそも野球観戦が主眼なので、主食はホットドッグで十分だ、という感じになる。
それでも何故か、朝食だけはしっかり取る。別に大したものを食べるわけではなく、卵とベーコン、大量のジャーマンポテト(付け合わせの定番ですね)か、たまにはパンケーキというところなんですが、こういうメニューをホテルではなく、街の「ダイナー」で食べるのだけは楽しみです。要するに、ニューヨーカー気取りを味わうわけだ。
このごりごりしたベーコンの向こう側に大量のポテトが......
「ダイナー」を何と訳すか。「軽食堂」なのだろうが、基本的に朝から夜まで食事を提供している小さな食堂、という感じである。日本のファミレスの感覚に近いかもしれない。こういう店に、朝の6時台に出かけて行って、早朝出勤(向こうの人って朝が早いよね)の人に混じりつつ、「卵を軽く裏返して焼いて下さい」なんてやってるわけです。味は......評価不可。うちで食べる朝食の方がはるかに美味いのは間違いないのだが、そこはこの冗談みたいな量と雰囲気を味わって、アメリカを実感するということで。狭いテーブルの上でニューヨークタイムズを広げて、さらに気分を演出。スポーツ欄なのはご愛嬌だが。
それにしても、マンハッタンの街中でこういう食事をすると、チップも含めて15ドルは取られる。初めてニューヨークに行った十数年前に比べると、値段が二倍ぐらいになった感覚だ。もちろん、マンハッタンから出ると急に値段が安くなり、『卵にベーコンの朝食を二ドル七十五セントで食べさせるダイナー』(「血烙」p.24)があったりするが(4年ぐらい前に取材に行きました)、こういうところも、今は値上がりしているんだろうなあ。
味はともかくとして、小説の中でしか知らない食べ物に出会う楽しみはある。今回は「Black Beans & Rice」。堂場が大好きなバークの「デイブ・ロビショーシリーズ」(舞台はニューオーリンズ)によく出てくるのだが、夕食にとあるダイナーに入ったら、サイドディッシュで発見。すかさず注文したら、まさに「黒豆とお米の炊いたの」でした(蒸したのかもしれないけど)。要するに黒い赤飯で、味は豆と米(笑)そのまんま。でも、「どんなものだろう」という長年の謎は解けました。
知識としては知っているけど、アメリカの現地で食べていないものはまだまだある。グリッツ(とうもろこしのお粥?)とか、ポーボーイ(カキフライのサンドウィッチ?)とか。南部の料理が多いので南部に行けばいいだけの話だが......あれ? 食べ歩きの旅はしないはずなんだけどなあ。
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