小説の中で食べるシーンがよく出てくる」と言われるのだが、その通りです。意識してやってます。ちょっと前までは「どんな車に乗っているか」「どんな服を着てるか」で登場人物の人となりを出そうとしていたのだが、最近はその手のブツで個性を出すのが難しい。しかし「食べ物」には、好みや体のコンディションが如実に出るわけで、依然として性格や状況を表現するのに適当な小道具である。
ここでちょっと悩むのは、「外食」の場合に店名を出すかどうかだ。リアリティは出るものの、いつの間にか店が閉まっていたりする(特に東京では)ので、後から読んだ時にちょっと間が抜けた感じになりかねない。というわけで、僕は「具体的な店名は出さない派」です。その代わりと言っては何だけど、料理については割とはっきりと書く。例えば――
『丸く平らに盛ったライスの上にドライカレーを敷き詰めているので、皿の上には茶色い円が出来上がっている。その上には半分に切ったゆで卵』(「蝕罪」P189)。
このカレーは実在します。
日記を読み返してみると、初めて食べたのは2007年。自宅近くに美味いカレー屋があると聞いて出かけたのだが、いや、驚きました。人生で最高に美味なドライカレー。さして辛くはないのだが、味が深い。これにサラダがついて当時は850円(大盛りも同料金という、僕のような大食らいには天国のような店だ)と、コストパフォーマンスも最高だ。カレーはドライを含めて4種類だけだが、どれもこれも美味い。求道的な雰囲気の店主は若いので、すぐになくなりはしないだろうけど、隠れ家にしておきたいという理由もあり、料理だけを登場させた。
カレーでもう一つ。
『ご飯とキャベツを高く盛り上げたところにカツを斜めに立てかけ、やけに黒い色のカレーがなみなみと注がれている』(「漂泊」p.133)。
これはお店も実在します。場所が東京・神保町ということで、古本屋や楽器屋、スポーツ用品店巡りが好きな人にはすぐ分かってしまうでしょう。しかし高城君、カレーばかり食べてるな。
というわけで、「料理は書くが店名は書かない」という基本方針はこれからも守っていくつもりだ。店名については「どこの店?」とクイズ代わりに楽しんでいただければ幸いです。