「味の基準になるお店」ってありますか? 中華ならここ、寿司ならここ......という感じで、あちこち浮気しても、最後はそこに戻ってくる、というような店のことです。
堂場の場合、中華の基準の店が決まったのは、30歳ぐらいの時でした。当時は八王子に住んでいたのですが、この街で、「結婚式場の一階にある中華料理屋」に出会いました。初めて行った時は、「ランチバイキングがある」というので、単に食べ放題を楽しもうとしたのですが、ここの味が何故かぴったりはまったのです。突出したところのない極めてスタンダードな味なのですが、点心が特に美味かった。そしてチャーハンの香ばしさも特筆物でした。チャーハンを美味く仕上げるのは本当に大変で、これで「店の実力が分かる」とも言われているようですが、だとしたら、この店の実力は相当なものです。
23区内に戻って来た後も、暇を見つけては八王子まで通うほどでした。しかし、段々忙しくなってきて、足が遠のくばかり。また行きたいな......と思いながら、ここ数年、ご無沙汰していました。
このお店、どういうわけか八王子と、もう一軒、渋谷区内に店舗があります。渋谷区内の店は家からすぐ近くで、いつでも行けることは分かっていたのですが、何故か足を向ける機会がありませんでした。同じお店とはいえ、料理をする人が違うと全然違う味になってしまうのは当然。もしもあの「基準の味」ではなかったら、自分が持つお店のイメージが変わってしまう、と恐れたわけです。
しかし先日、思い切って出かけてみました。その近くで買い物をするついでだったのですが、ああ、何で今まで行かなかったのかと後悔しきり。まさに八王子の店の味そのままだったのです。
八王子店でよくやったように点心のコースを頼んだのですが、かつて馴染んだ味が完全に舌に蘇る、実に満足いくものでした。直接食べ比べたわけではないので「まったく同じだ」とは言えないのですが、しっかり記憶と重なる味でした。
中華料理は大好きで、横浜の中華街でもいろいろな店に行きましたし、名店の評価を受ける都内のいろいろな店でも食べ歩きました(中華って案外割安だしね)。それぞれ美味かった、と満足したのですが、やはり基準の味が一番。何となく敬遠していたのが悔やまれ、これからは通い詰めよう、と抹茶風味の杏仁豆腐(超美味だった)を食べながら固く決心したのでした。