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〔11月15日UP!〕
出口を塞がれた野田政権の末期

永田町政態学
〜「中央公論」2012年12月号掲載

 野田首相がいよいよ厳しい局面に追い込まれた。

 選挙後の展望を描けぬまま衆院解散に踏み切るか、または何もできないのに政権に居座り続けるか。首相はずるずると後者の道を進んでいる。

 首相は八月八日、自民、公明両党との党首会談で「近いうちに国民に信を問う」と約束し、社会保障・税一体改革法成立への協力を取り付けた。首相に近い民主党幹部は「首相はこの時、秋の衆院解散が念頭にあった」と証言する。想定していたのは次のようなシナリオだ。

〈首相は代表再選後、十月に衆院を解散する。十一月の衆院選で過半数を割り、自公に政権を譲らざるを得ないが、自公は参院で過半数を持たない。自公民で大連立政権を組むか、一体改革の三党協力の枠組みで政権への影響力を確保し、党の求心力を維持する――〉

 実際、岡田克也副総理や安住淳財務相(現・幹事長代行)ら一体改革を進めた政権中枢は、当時の自民党の谷垣禎一総裁や大島理森副総裁らに働きかけ、衆院選敗北を前提に生き残り策を見いだそうとしていた。

 首相が八月に解散を決断していれば、このシナリオは実現できたかもしれない。しかし、党内融和を最優先する輿石東幹事長が敗北必至の衆院選に同調することはなかった。加えて、九月十七日の「小泉訪朝一〇年」までに日朝協議に進展があるのではないか、という期待も首相の判断を遅らせた。

「三党路線」に理解を示した総裁の谷垣氏を退陣に追い込んだのは、首相が解散に踏み込めなかったためだ。首相周辺は、解散に抵抗する輿石幹事長を外し、「三党路線」を主導した岡田氏の幹事長起用を進言したが、日の目を見ることなく終わった。離党者が相次ぎ、党内融和のシンボルである輿石氏を代えられなくなったのだ。

 自民党の安倍晋三総裁は大連立をはじめとする「三党路線」に見向きもしない。日教組出身で参院議員会長を兼ねる輿石氏も「参院選で戦う自民党と協力できるはずがない」というのが持論だ。

 臨時国会を控えた十月十九日の民自公党首会談は、かつてのシナリオが崩壊し、「三党路線」が夢物語となったことを印象づけた。首相は「近いうち」解散の約束について、「だらだらと延命を図るつもりはない。条件が整えば、きちっと自分の判断をしたい」と説明したが、安倍氏は解散時期の明示を求めて納得しなかった。

「私は谷垣さんから引き継いでいる。『予算編成はしない』と言ったじゃないですか」

 年末の予算編成をしないということは、十二月までに衆院選を行うという意味になる。安倍氏は会談で谷垣氏との「解散密約」を認めるよう迫った。しかし、首相は「言った、言わないになるけど、私はそういう認識ではない」と否定した。

 衆院選に敗れても政権に関与できる選択肢がなくなった以上、首相にとって、解散は「単なる政権転落」しか意味しない。

 政権転落を前提とした第二のシナリオは「衆院選で一〇〇議席以上を確保して党の崩壊を食い止める」ことだ。

 民主党は郵政解散で惨敗した二〇〇五年衆院選でも一一三議席を取った。自民党は〇九年衆院選で一一九議席。民主党幹部は「負けても一〇〇議席あれば、次のチャンスを狙える」とみる。それ以下なら離党者が相次ぎ、党がなくなるというわけだ。

 しかし、この目標は厳しい。党が実施した情勢調査では「八〇議席程度の可能性がある」という結果が出た。

 政権浮揚のため、集団的自衛権の行使容認や環太平洋経済連携協定(TPP)参加表明を提案する議員もいる。しかし、さらなる離党者が出るのは確実だ。

 党内の反発がない「北朝鮮の拉致問題の進展」にかける声もあるが、「神風頼みだ」との自嘲が漏れる。

「衆院選後の三党協力」というかつてのシナリオも、「一〇〇議席確保して反転」という現在のシナリオも行き詰まった。自民党からは、赤字国債発行を可能とする特例公債法案も、違憲状態にある衆院選の「一票の格差」を是正する選挙制度改革法案も成立させ、首相に「近いうち」解散の約束を守るよう迫る案も出ている。

 民主党内ではこんな声が漏れ始めた。「一票の格差を是正しないまま衆院選をした方がいいかもしれない。無効判決が出て困るのは政権に就いた自民党だ」

 政権末期もここに極まった。(倉)
(了)

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