注目記事

橋本五郎=読売新聞特別編集委員
星浩=朝日新聞編集委員
飯尾潤=政策研究大学院大学教授
〜「中央公論」2011年10月号掲載

 かつて米国のクリントン大統領は民主党政権であるにもかかわらず、「大きな政府の時代は終わった」と一般教書演説で述べ、大きなインパクトを与えました。これは民主党の政策が明確だったからこそ、土台の部分とリーダーシップをきちんと整理して語ることができたわけです。日本の民主党は、橋本さんがおっしゃるように、土台とリーダーの構想がちぐはぐになってしまっている。私は、土台としての理念・政策をしっかり固めることが必要ではないかと感じます。
飯尾 私は、政治家の個性と、政策や政権構想とが混同されているような気がしてならないのです。やはり小泉純一郎総理の影響が大きかったのかなと感じます。あの人は個人の思いを熱く語って成功したようにみえます。ただし巧妙な人でもあり、日本の抱える問題からすればさほど大きなテーマといえない郵政民営化に争点を限定し、連呼することで高い支持を獲得し、政敵を封じ込めていった。メディア対策も慎重さも欠いたまま、形だけ真似をして、リーダーシップとは個性を発揮することだとばかり、ただ自分の思いだけ語っても、うまくいくはずがありません。
橋本 小泉さんの場合は、われわれも「郵政改革がすべてなのか」と批判しましたが、郵政民営化を突破口にして、官から民への流れを作り出そうというような、ある種の国家経営の認識はあったように思います。
飯尾 だから、単なる個性などではなくて、戦略があったわけです。
橋本 そうですね。そしてその背景には、やはり「これをやらずして、自分は何のために総理になったのか」という、強い意志があったのだと思います。総理大臣になるというのは、そういうことではないでしょうか。

反省がない与党議員
飯尾 今の政治家が誤解していることは他にもあって、誰でも総理になれると思い込んでいるのですね。リーダーたりうる力量を持つ人は、どこの国にだってそんなにたくさんはいませんよ。
橋本 長く永田町を眺めてきて、政界ほど自己認識と客観認識の落差が大きい世界は他にないと、つくづく思いますね。いつかは総理に上り詰めるという気概は必要かもしれないけれど、あなたは無理でしょうという人物が意欲を示すケースが多いですね。(笑)
飯尾 普通の国では大臣になるのも大変です。ところが日本では、当選回数さえ重ねれば、能力とは無関係にポストが与えられる。これは自民党の病気だったのですが、民主党はもっとひどくて、ろくな修業も積ませずに重要なポストに就かせますからね。
 それは非常に大事なポイントで、例えば英国の保守党でも労働党でも、七〜八割の議員はバックベンチャー(当選を重ねても首相や閣僚にはならず、党首討論で後ろの席に座っている一般議員)を自覚していて、残りの大臣候補をサポートする。そういう人が日本の政界にはほとんどいないでしょう。みんなが大臣になれるような幻想を持っている。それをどこかで、党が断ち切らないといけませんね。「あなたは将来の首相候補」「君は悪いけどバックベンチャーとしてがんばってほしい」と、ある段階が来たら“クラス分け”するような。本来は、そういう冷徹な仕組みが、二大政党制のなかにビルトインされていないといけない。そういった仕組みが整備されないまま、中央政界の二大政党だけが存在しているというのが日本の現実です。
橋本 誰でも総理になれる、つまり自分はバックベンチャーじゃないと思っているから、誰も本気で総理を支えようとしないんですね。鳩山さんや菅さんに対しても、全くその気がない。
「私はリーダー向きではないが、リーダーを支えることに関しては、第一人者を自任している」―そんな人がどれだけいるかで、政権の行く末が決まるような気がします。
飯尾 野党時代に、党首・総理候補についても徹底的にふるいにかけ、これぞという人を選ぶことが大切です。民主党にそのプロセスが欠けていたことも、政権を取ってから役割分担がうまくいかず、自ら選んだはずの総理を支えることができない理由でしょう。
橋本 自民党時代の安倍(晋三)さん、福田(康夫)さん、麻生(太郎)さんは、みな総裁選で六割を超える票を獲得しています。つまり、大多数の議員が支持したのです。にもかかわらず、一年たたずに「○○降ろし」が始まる。鳩山さん、菅さんについても同じです。本当に悪しき伝統ができてしまいました。われわれは政権におかしなところがあれば批判します。でも投票した議員はその行動に責任を持てといいたい。

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