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〔5月9日UP!〕
楽天はアマゾンに勝てるのか

三木谷浩史=楽天株式会社代表取締役会長兼社長
勝間和代=経済評論家
〜「中央公論」2011年6月号掲載

●編集部より…この対談は東日本大震災が発生する以前の三月二日に行われたものです。編集部の判断により掲載を一号遅らせています。内容等は対談当時のままとしてありますので、ご了承ください。

彼らとはアプローチが違います

勝間 三木谷さんが、楽天をマルチ・ナショナル(多国籍)な企業に育てあげて、世界市場に打って出たいと考えているのは、よく知っています。いろいろなインタビューでもそう答えていますね。今日は、さらに一歩踏み込ませてください。
 もし楽天がこれから多国籍企業を目指すとしても、すでに世界には資金力や人材力で先行している超巨大企業がいくつもある。アップル、グーグルにアマゾン、加えて最近時価総額が六〇〇億ドルにも達したことで注目されているフェイスブックなどです。私が知りたいのは、楽天はそれらの企業とどう戦っていくつもりなのかということです。「日本」という特性を活かすのか、それとも純粋に技術力とアイデアで戦うのか、それとも第三の道があるのか、お聞かせいただけますか。

三木谷 去年の夏に、我々はプライスミニスターというフランスでナンバーワンのEC(電子商取引)事業をしている会社を買収したのですが、実は買収の際に、アメリカのある企業と競合していました。でも彼らは買収される相手として楽天を選んでくれた。彼らが挙げた理由の一つは、「アメリカ企業に買われると、自分たちの存在意義がなくなるから」というものでした。経営方法も、ブランドのつくり方も、箸の上げ下ろしまでアメリカ流にされてしまうのは嫌だと。

勝間 確かにアメリカの企業に買収されると、完全に支社化しますね。

三木谷 けれど楽天は、「プライスミニスターの良さを生かしつつ少しずつ融合していこうよ」という考え方をしています。経営メソッドのフランチャイズ化をすると言いますか。例えば、楽天のポイントプログラムをアメリカやヨーロッパで始めるとします。その場合は、まず「ソースコードはこう」「ビジネスの肝はここ」と伝えます。でもそのあとは何も言いません。もし、「うちの会社ではこうしたい」という話があれば、「それはご自由に」というわけです。それくらいの自由度がないと、経営が楽しくないでしょう。

勝間 「フランチャイズ化」という表現は非常に分かりやすいですね。アメリカ系の企業が企業買収をすると、「〇〇に支社をつくった」という感じになりますが、楽天の場合は「〇〇に本部ができた」というフラットな感じでしょうか。

三木谷 そうですね。これは「楽天市場」における出店企業との関係と同じですが、とにかく彼らのやる気と自立性をどれだけ引き出せるかが重要だと考えています。まあ、アメリカ式と楽天式のどちらが優れた買収方法かについては今後のビジネスの結果を見ていただくとして、少なくとも「企業買収」に関して世界の競合他社と我々は、アプローチが違います。
 そしてご存知のように、ビジネスモデルもかなり違う。彼らは、型番商品を効率性と価格戦略で売りさばいていくのを基本軸としています。巨大な倉庫をつくって、同一商品を効率よく大量に売るスタイルですね。一方我々は、「つくり手の思い入れ」を重視して商品のバラエティ性を保つことや、売る人と買う人が密にコミュニケーションをとる販売スタイルを大事にしています。効率性を多少犠牲にしても手づくり感を重視する。そして同じ商品を大量に売るのではなくてロングテールで勝負をする。それが基本的なスタイルです。
 結局、これだけ戦略が違うと、一口に「競合」と言っても、ビジネスの現場では、ガチンコ勝負にはならないんですね。実際、企業買収でアマゾンと競合したことは一度もありません。

勝間 アマゾンは、「商品軸」で統合していますよね。でも楽天は、「お店軸」で統合している。そういったスタイルのインターネット企業は、世界を見渡しても多くはないということですか。

三木谷 よく調べてみると、最近は楽天を真似した企業が世界中にあります。でも我々と同じ規模の企業ではほとんど見かけません。今お話ししたような「店舗さんの自主性と多様性を大事に」「コミュニケーションを密にする」といった発想が、そもそも日本的なのかもしれませんね。

勝間 まあ、アメリカの発想ではないですね。

三木谷 人間の消費行動は思いのほか多岐にわたっています。型番商品では満足しない人のマーケットは相当大きい。だから我々は自分たちの方針に自信を持っています。

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