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常岡浩介、カルザイ政権の闇と拘束の真相を語る

アフガニスタン拉致ジャーナリストの証言

西牟田 靖 ジャーナリスト

 九月四日。五ヵ月あまりもの間、アフガニスタンで拘束されていた日本人ジャーナリストの常岡浩介(四十一)が解放された。二日後の六日、常岡氏は日本に帰国。その様子はNHKをのぞく各テレビ局で大きく報道された。
 各メディアからの取材依頼が続き、忙しい日々を送っている彼に時間をとってもらい、九月十五日の夕方、私の自宅にきてもらった。

タリバン支配地域への取材

─今回の取材の経緯は?
常岡 タリバン(「学生たち」の意)のトップであるムッラー・オマルが、アメリカ軍との和平交渉を求めているという話を聞きました。オマル氏は「カルザイ政権は、アメリカのためだけに動いているあやつり人形だから、アメリカと和平交渉をやるしかない」と考えていると。
 その真相を知りたくて、去年、元タリバン幹部から話を聞くためにカブールへ行きました。でも政府支配地区であるカブールでは、彼らは厳しく監視されていた。政府軍やアメリカ軍と実際に戦っているタリバン軍と、自由に連絡が取れない状態に置かれていた
んですね。僕は何とかして、オマル氏の命令系統の中にいるタリバンの幹
部に話を聞き、さらに将来的にムッラー・オマルに取材ができるようにコネと人脈を作りたいと思いました。それでタリバン支配地域を目指したんで
す。
─そこで拘束されたわけですね。
常岡 そうです。まずは現地の友人を通してタリバン側に、「ムッラー・オマルの命令系統にある司令官であれば誰でもいい」と伝え、話をつけました。
 最初は比較的穏やかな南西部のヘルマンドか、南部のカンダハルへ行くはずでした。ところが「アメリカ軍の作戦があったので、外国人を受け入れられる状態ではない」という回答がきた。「東部はどうか」と聞くと「(タリバンのナンバー2である)バラーダル氏が捕まってから現地が緊張していて、外国人を信用できる状態ではない」とのこと。仕方がないので、「北部ならどうか」と聞くと、「クンドゥズ州のどこかの部隊が受け入れる。上級司令官がOKを出した」という回答がきた。
 目立たないように、バックパックやパソコン、洋服といった荷物をカブールの友人に預けて、服もアフガニスタンの民族衣装であるシャルワルカミーズに着替えました。ビデオカメラや一眼レフカメラは、アフガン人が持っているズダ袋みたいな袋を借りて、そこに入れました。
 クンドゥズで飛行機を降りると、空港周辺は完全に「最前線」という状態でした。塹壕が掘ってあり、兵隊たちの銃はみな同じ方向に向けられている。
 目的地がイマーム・サヒーブだと知らされたのはクンドゥズに到着した後です。安宿の部屋から一歩も出ないで、タリバンの使者がくるのを待ちました。食べ物などの必要物資は一緒に来てくれた友人に持ってきてもらいました。三月三十一日、タリバンの青年がローカルバスでやってきました。イマーム・サヒーブでタリバンの運転する車に乗り換えてタリバン支配地域に連れていってもらい、まったく問題なく取材を終えることができました。
 一泊した翌四月一日の朝、僕と案内役と運転手の三人で、町に戻ろうとしました。町ではタリバンも武装するわけにはいかないので、銃を持っていません。丸腰の状態で車に乗っていると、道の先に民族衣装を着たタリバンと
しか見えない男が二人立っていた。僕が「タリバンじゃないのか」と聞いたら、「違う、あれは政府軍だ」と訂正された。「政府軍」と聞いて、僕はむしろ安心しました。政府支配地域で政府軍に会っても、普通ならば外国人は素通りできますから。でも、「アッ
サラーム・アライクム」と挨拶して通り過ぎた途端、後ろから銃を向けられて、車を停められた。それから目隠しをされた。彼らが荷物を奪い始めたので、慌てて抱え込もうとしたら、ペルシャ語で「なくなりゃしねえよ」といった意味の言葉を投げつけられました。政府軍が「なくなりゃしねえよ」と言っているんだから「すぐ戻ってくるかな」とすごく甘いことを考えていました。

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