CN-Fantasia
強盗に襲われ無一文の橘香が働くことになった屋敷の主人は、光に弱く、引きこもりで超傲慢。新聞一枚拾うのにも橘香を呼びつける主人の衝撃の正体とは!? 新シリーズ、堂々開幕!
カバー:直江まりも
刊行日:2014/9/25
新書判/232ページ/定価:本体900円(税別)
ISBN978-4-12-501313-8 C0293
常々思うのですが、人間関係は非常に難しいものです。
シンデレラがいじめられたのは血が繋がっていなかったからですが、たとえ血が繋がっていようとも、諍いはあります。エスカレートして親が子を虐待することも、子が年老いた親を捨てることもあります。愛されなかった代償に親を捨てるならともかく、愛情を込めて育ててくれた親だろうと、捨てる子どももいるのです。
人を傷つけるとき、明確な悪意を持って傷つけるよりも、何の気なしにやる加害者のほうが多いのではないでしょうか。大抵は「面倒だったから」「他の誰かがやってくれると思った」「そんなつもりじゃなかった」という何気ない言葉を隠れ蓑にして。
加害者にとっては「ささいなこと」も、被害者にとっては「二度と誰も信じられない」を追いつめるかもしれません。
今作の主人公である橘香も、家族から手酷い裏切りを受けた少女です。家族だと思っていた人たちに裏切られ、傷つけられた彼女は、過去をすべて捨てようと決めました。自分と周りの間に壁を築き、たった一人で生きていこうと決意します。
ただし、強固に造られた壁は自分を守ってくれますが、自由も制限されます。二度と傷つけられない代わりに孤独を選ぶのか、たとえ傷つけられても付き合い続けるのか。すべては自分次第だということを橘香にはわかってもらいたいと思います。
〔夏目 翠/2014年9月〕